映画における「テンポ」とは、単に映像を短く切って繋ぐことではない。彼が構築する編集の骨組みには、人間の認知限界を巧みに突いた計算が潜んでいる。膨大なセリフと専門用語が飛び交うシーンであっても、観客が置き去りにされることはない。視線誘導と音響の間隔がミクロ単位で設計されているからだ。
一般的な映画制作において、素材の取捨選択は苦痛を伴う作業である。しかし、彼は「何を捨てるか」ではなく「どの瞬間を脳裏に刻むか」という逆算の思考で作業にあたる。結果として生まれるのは、カットが変わるたびにアドレナリンが噴出するような快感だ。映像編集という裏方の職人技を、映画の主役にまで引き上げた功績は計り知れない。