悪夢の舞台となったのは、東京ビッグサイトで開催されたアジア最大級のアートイベント「デザインフェスタ」だった。約数千ものブースがひしめき、表現者と来場者が熱心に交流する熱気の中で、問題の菓子は飛ぶように売れていった。だが、その華やかな祝祭の裏側で、目に見えない細菌の繁殖は静かに、そして確実に進行していた。
異変が表面化したのはイベント終了直後のことだ。X(旧Twitter)上に「購入したマフィンから納豆のような強烈な異臭がする」「割ってみたら中から糸を引いている」といった写真付きの告発投稿が相次いで投下された。タイムラインは瞬く間に炎上し、リツイートの嵐とともに被害報告が雪だるま式に膨れ上がっていく。
現場での対面販売では気付きにくかった異常が、デジタル空間の拡散力によって一気に可視化された瞬間だった。販売者の不十分な初期対応がさらなる不信感を呼び、ネット上の告発は単なる口コミの枠を超え、公衆衛生上の危機を知らせる緊急サイレンとして機能することになった。