「腫瘍は良性です。今すぐ切る必要はありません」。医師から告げられるその一言は、一見すると最大の安心材料に思える。しかし、診察室を出た後に訪れるのは、予想外の複雑な葛藤だ。
良性腫瘍であっても、大きさが3センチ、4センチと肥大化するにつれて物理的な不快感は増していく。横になったときに喉が絞めつけられるような圧迫感、唾液を飲み込む際のひっかかり、そして何より鏡を見るたびに視線が釘付けになる首元の膨らみ。命に別状はないという医学的診断と、日常生活の質(QOL)が刻一刻と削られていく個人的な実感。この落差こそが、患者を深く悩ませる根源だ。
特に働き盛りや子育て世代の女性たちからは、「悪性(ガン)でもないのに仕事を休み、手術費用を払ってまで受診すべきなのか」という周囲の目が気になるとの声も多い。「良性なら放置すればいい」という家族や職場の無理解な反応が、当事者の孤独感を募らせるケースも後を絶たない。