「横手投げ=球速が出ない」という昭和・平成の固定観念は、2026年の甲子園において完全に崩れ去った。今大会のバックネット裏を沸かせたのは、サイドスローから最速148キロのストレートを投げ込む怪物投手の出現だ。鋭い腕の振りから繰り出されるボールは、打者の内角へ沈み、あるいは外角へ逃げるように伸びていく。
「以前なら横手投げといえば、スライダーとシンカーでゴロを打たせるのが定石でした。しかし現在の横手派は違います。球速と強いホップ成分を兼ね備えたスウィーパーやシューターを自由自在に操り、空振りを奪えるスタイルへ変貌している」
関西の強豪校を率いるベテラン監督は、そう語りながら脱帽した。従来のオーバースローであれば高めに浮いた球が痛打されるリスクを抱えるが、横手投げ特有の出どころの見えにくさが、打者の体感速度をさらに数キロ跳ね上げる。球速表示以上の圧迫感。それが打者のバットを空を切らせる最大の要因だ。