紀州漆器の起源は室町時代にまで遡る。四百数十年以上の歴史を誇るこの伝統工芸が、2026年の今、世界的なサステナビリティの波に乗って大激変を遂げつつある。地元の若い職人たちが中心となり、天然由来の漆成分とバイオマスプラスチックを融合させた画期的な新素材を開発したことがきっかけだ。
「日常の器として使われてこそ伝統」――黒江の漆器店店主はそう語る。食洗機に対応した堅牢な漆器や、海外の高級レストラン向けに特注されたモダンなデザインのテーブルウェアが、ヨーロッパや北米へ直接出荷されている。古くからの技法を受け継ぎつつも形式にとらわれない柔軟さこそが、この地を守ってきた最大の武器なのだろう。