通常の神社とは、明らかに空気の異質さが違う。幣立神宮が掲げる由緒は、神道体系の枠組みに容易に収まらない。古事記や日本書紀よりもはるか昔、地球上に人類が誕生した初期の記憶を今に伝えているというのだ。
主祭神として祀られるのは「天神人祖一柱(あまつかみひとつむすびのひとはしら)」。万物の親であり、宇宙の根本を意味する大元尊だ。地元の伝承によれば、ここは天孫降臨に先立ち、神々が地球上に降り立った「原初の地」とされている。社殿の背後にそびえる高台に立ち、深い谷を見下ろすと、確かに人間が生まれる以前の原始地球の鼓動がそのまま残されているかのような錯覚を覚える。
「ここには争いの歴史がありません。ただ、命の始まりに対する感謝だけがある」。地元で長年ガイドを務める男性は、静かに語る。一般的な神社が特定の英雄や政権の安泰を祈願して建てられたのに対し、この社は「地球そのものの調和」を祈る場として機能してきた。この特異性こそが、宗教や文化の壁を超えて人々を惹きつける最大の要因だろう。