都内某所、看板すら掲げていない古いビルの3階に、予約が数ヶ月先まで埋まる鑑定部屋がある。訪れる人々が親しみを込めて呼ぶその主こそ「テンちょう」だ。
部屋に入ると、お香の匂いも怪しげな水晶玉もない。あるのは木製の簡素なテーブルと、手元を照らす強いスポットライトだけ。テンちょうは相談者の手を両手で包み込むように持ち上げると、沈黙のまま数分間見つめる。「あなた、先週大きな嘘をつきましたね?」――唐突に放たれる一言に、訪れた者は息を呑む。予言ではなく、手の緊張度や血流の滞りから、その人の精神状態を冷徹なまでに見抜くのだ。