学生時代を過ごした日本大学陸上競技部での徹底的な鍛錬が、井上の強固なベースを築いた。インカレをはじめとする数々のタイトルを日大にもたらした後、実業団の強豪である富士通陸上競技部へと進む。トップアスリートとしての環境が整う一方、限界を超えて肉体を酷使する日々に怪我の影が忍び寄る。
肉離れやアキレス腱の不安。スピードを追求すればするほど、身体にかかる負荷は幾何級数的に跳ね上がる。日本陸上競技連盟の強化指定選手として期待を背負いながらも、走れない日々に身体の構造と向き合い続けた経験。痛みを抱えながら「どうすれば無駄な力を使わずに最大の出力を生み出せるか」を内省した苦闘の時間が、後の名指導者としての卓越した眼力を育てることになった。