左心不全の多彩な身体所見は、試験問題でもカルテの記載でも無秩序に並んでいるように見えます。しかし、すべては「肺のうっ血」か「前方への拍出量低下」のどちらかに分類されます。
1. 肺うっ血による症状(呼吸器系のSOS)
肺の毛細血管圧が上昇し、肺胞や間質に水分が滲み出ることでガス交換が著しく障害されます。
- 労作時息切れ・呼吸困難:初期から見られる最も代表的な兆候。
- 起坐呼吸(起座呼吸):臥位になると呼吸が苦しくなり、起き上がると楽になる現象。
- 夜間発作性呼吸困難:就寝中に突然激しい息苦しさで目が覚める状態。
- 咳嗽・喘鳴(心臓喘息):気道粘膜の浮腫や刺激による咳、ヒューヒューという呼吸音。
- ピンク色泡沫状痰:重度の急性肺水腫で認められる特徴的な喀痰。
- 聴診上の湿性ラ音(水泡音・捻髪音):肺胞内に貯留した液体を空気が通過する際に出る音。
2. 心拍出量低下(低灌流)による症状(全身臓器の悲鳴)
全身の組織灌流圧が保てなくなることで生じる虚血サインです。
- 血圧低下・頻脈:拍出量の減少を心拍数増加で代償しようとする反応。
- 乏尿・尿量減少:腎血流量の低下に伴う糸球体濾過量の減少。
- チアノーゼ・四肢冷感:末梢循環不全により手足の指先が冷たく青紫色になる。
- 冷汗:交感神経の過剰な興奮による発汗。
- 易疲労感・倦怠感・意識障害:骨格筋や脳への血流低下。
試験で即座に引き出せる鉄板の「左心不全 ゴロ合わせ」
覚え方として長年受験生に親しまれているのが、低拍出量と肺症状を掛け合わせた「ハイジひいしち」です。
【左心不全の王道ゴロ:ハイジひいしち】
・ハイ:肺うっ血(息切れ・起坐呼吸・喘鳴)
・ジ:腎血流低下(乏尿・尿量減少)
・ひ:冷汗
・い:意識障害・疲労感
・し:四肢冷感
・ち:チアノーゼ
「左(ひだり)=ハイ(肺)ジ」と頭文字を連動させることで、「右心不全の浮腫や肝肥大」と混同するリスクを完全に遮断できます。