皮膚科の臨床現場や医療Q&Aコミュニティに寄せられる実際の相談データを紐解くと、受診者の行動には顕著な二極化が見られます。「がん恐怖から夜も眠れずに翌日駆け込む人」がいる一方で、「半年以上放置して黒いシミが爪全体に広がってからようやく来院する人」が存在します。
都内の大学病院皮膚科で爪診療を担当する専門医は、取材に対して現場の実情を次のように証言しています。
「『爪に黒い点があってメラノーマが怖い』と来院される患者さんの7割から8割以上は、結果として爪下血腫や靴の摩擦による単純な内出血です。特に趣味で登山やマラソンを始めた方、あるいは足先の細いパンプスを新調した女性が、ぶつけた自覚がないまま受診されるケースが圧倒的多数を占めます。しかし、残りの数パーセントの中に、本物のメラノーマや早期のボーエン病(皮膚内がん)が紛れ込んでいるのがこの疾患の恐ろしさです」
SNSや相談掲示板の生の声を見ても、「足の親指に黒い点があるのに全く痛まないから放置していたら、数ヶ月で縦の黒いスジになり、慌てて皮膚科に行ったらメラノーマ初期と診断されて即手術になった」という深刻な手記が確認されます。逆に、「内出血だと思い込んで放置していたが、爪が割れて悪臭を伴う浸出液が出てきた時点で受診し、重度の爪白癬と診断された」というパターンもあり、自己診断がいかに危険であるかを如実に物語っています。