亡くなる直前まで、彼は現役の表現者であり続けた。当時出演していた舞台『クレシダ』では、若い役者たちを指導する老演出家役を熱演。体調不良の予兆すら見せず、舞台上では圧倒的な存在感を放っていたという。観客や共演者は、彼のエネルギーに満ちた芝居に圧倒されていた。
「舞台の上で死ねれば本望」という言葉を遺す役者は多いが、平幹二朗もまた、文字通り命の最後の灯火が消える瞬間まで表現者であり続けた。彼が最期までセリフを覚え、役作りに没頭していたという事実は、残された演劇界の仲間たちにとって、悲しみと同時に最大の敬意の対象となっている。