ネモフィラの代表的な花言葉である「あなたを許す」のルーツは、古代ギリシャ神話に伝わる悲劇的な愛の物語にあります。
ある人間の男が、「ネモフィラ」という絶世の美女に恋をしました。男は彼女への激しい情熱から、「彼女と結婚できるのであれば、自分の命を冥府の神ハデス(プルトン)に差し出しても構わない」と神前で誓いを立ててしまいます。その熱意が実を結び、2人はめでたく結ばれました。
しかし、神との誓約は絶対でした。幸福の絶頂であるはずの結婚初夜、誓い通り男の命は奪われ、冥界へと連れ去られてしまったのです。
残された妻ネモフィラは深い悲しみに暮れ、夫を追って冥府の入り口へと向かいました。しかし、生者である彼女が死者の国へ足を踏み入れることは許されません。彼女は冥府の門の前で、夫を想いながら幾日も涙を流し続けました。その一途で健気な姿に心を打たれた冥府の神が、彼女の体を哀れみ、地上で美しく咲き続ける一輪の青い花(ネモフィラ)へと姿を変えたと伝えられています。
「自らの軽率な誓いで先立ってしまった夫を、妻が恨むことなく愛し、受け入れた」という物語の結末から、「あなたを許す」という寛容と深い慈愛の花言葉が誕生しました。決して相手を呪うような怖い意味ではなく、自己犠牲を包み込む究極の愛情表現がその本質です。