そもそも、なぜ自転車は車道を走らなければならないのか。その歴史を紐解くと、昭和の高度経済成長期から続く「場当たり的な交通政策の歪み」が見えてきます。
昭和35年(1960年)に制定された道路交通法において、自転車は馬車や荷車と同様に「軽車両」と位置づけられ、車道走行が基本とされました。しかし、昭和40年代のモータリゼーションの進展に伴い、自動車による自転車や歩行者の死傷事故が激増する「交通戦争」が勃発します。これを受け、政府は昭和45年(1970年)の道路交通法改正において、緊急避難的な措置として「歩道通行の例外規定」を導入しました。
この結果、日本では世界でも珍しい「自転車が歩道を我が物顔で走る約40年間の慣習」が定着しました。ところが、2000年代以降、歩道上での自転車と歩行者の衝突・死亡事故が多発。さらにロードバイクや電動アシスト自転車の普及により自転車の高速化が進んだことで、警察庁は2008年以降、方針を180度転換して「自転車は車道原則」を再び強力に打ち出し始めました。
警察庁が公表している事故分析データによると、「自転車事故における車道と歩道の危険性比較」では意外な事実が判明しています。実は、歩道走行中の自転車が交差点に進入した際、左折・右折しようとする自動車の死角に入り込み、出会い頭に衝突する事故の割合は、車道を正しく走っている場合よりも高いという統計結果が出ています。歩道から突然飛び出してくる自転車をドライバーが視認しづらいことが、交差点事故の主因となっているのです。