ステーキの醍醐味であるあの魅惑的なアロマは、アミノ酸と糖が熱によって結合するメイラード反応によって生まれる。この化学反応を最大限に引き出すためには、肉の表面水分を徹底的に飛ばし、150度以上の高温に晒さなければならない。水分が残っていると気化熱で温度が100度で頭打ちになり、肉は「焼く」のではなく「煮る」状態に陥ってしまう。
ここで圧倒的な威力を発揮するのが、ル・クルーゼに代表される重厚な鋳物ホーローウェアやスキレットだ。蓄熱性に優れた厚手の鍋は、冷たい肉を投入しても表面温度が急降下しない。オーブンから取り出した直後の肉を熱せられた鉄板に滑り込ませると、耳を打つ激しい音とともに黄金色のクラスト(焼き目)が一瞬で形成される。外側のクリスピーな歯ごたえと内側のとろけるような柔らかさという、極上のコントラストを生み出す鍵がここにある。