本作には、ラストの悲劇を予感させるいくつもの伏線が張り巡らされていた。北野が愛したホタルの観察、紗和の手元から消えたエンゲージリング、そして映画ラストで示された線路での指輪の描写だ。北野が死の間際までポケットに忍ばせていた婚約指輪は、事故現場の近くの草むらへと吹き飛ばされ、紗和の手に渡ることはなかった。
この「届かなかった指輪」は、社会的ルールを破った者に対する冷徹な制制裁の象徴であると同時に、安易な救済の否定とも解釈できる。井上由美子の脚本は、単なる恋愛ドラマのハッピーエンドを許さず、因果応報の理を徹底的に突きつける。だが、ラストシーンで紗和のお腹に宿っていた新しい生命の気配は、絶望の底に残された唯一の希望の光として視聴者に強い印象を残した。