マンハッタン中心部のオフィス街。昼休みにテイクアウト用のサラダ専門店へ足を運ぶと、長蛇の列の脇でレシートを見つめて呆然とする若手会社員の姿があった。チキンと数種類の野菜を追加したボウル1杯が26ドル。ミネラルウォーターを合わせれば日本円にして5,000円近くが消える。「同僚との気軽なランチは月1回の贅沢になった。普段は自宅からタッパーに詰めたパスタを持参している」と彼は肩を落とす。
ファストフード店ですら防波堤にはならない。かつて庶民の味方だった大手チェーンのセットメニューは15ドルから18ドル前後が相場となり、低所得層だけでなくミドルクラスの足も遠のいている。全米自動車協会(AAA)の統計を見ても、日々の通勤コストや自動車保険料の上昇率は家計を直接圧迫し続けている。
さらに深刻なのが住宅コストだ。大都市圏における賃貸アパートの家賃更新時には、月額数百ドルの上乗せが平然と要求される。クレジットカードの残高は全米で過去最高水準を更新し続け、返済の延滞率もじわりと上昇している。生活必需品の支払いをカードのリボ払いに頼らざるを得ない世帯が増加しており、一見堅調に見える個人消費の足元には、薄氷を踏むような脆弱さが潜んでいる。