箸という食具そのものの発祥は、古代中国に遡ります。紀元前11世紀頃の殷(商)時代の遺跡から青銅製の箸が発掘されており、当初は食事用ではなく、神事の祭祀や熱い鍋から具材を取り出す調理道具として用いられていたことが判明しています。
箸が一般庶民の食事道具として普及したのは漢の時代以降とされています。当時の中国北部では粉食文化(麺や饅頭)が発達し、熱い汁物や麺を食べるために箸の利便性が重宝されました。さらに宋代から明代にかけて、炒め物や油を使った調理技術が飛躍的に発展したことで、スプーン(散蓮華)と併用されながら現在の箸文化が完成へと向かいます。
日本の箸は奈良時代前後に遣隋使・遣唐使によって伝来したとされていますが、日本では「一人ひとりの膳」でご飯茶碗や汁椀を手に持ち、魚をきれいに食べる独自の作法が発達しました。その結果、中国から伝わった箸は日本独自の繊細な形状へと枝分かれし、本国である中国では大皿料理に最適化された長大なフォルムへと進化を遂げたのです。