1989年に産声を上げた音楽劇「夜会」は、既存のコンサートや演劇の枠組みを根底から覆したライフワークである。脚本、作詞、作曲、主演のすべてを中島みゆき自らが手掛け、人間の深層心理や輪廻、再生といった重厚なテーマを独自の美学で描き出してきた。
観客を圧倒する歌唱力はもちろん、舞台空間全体を支配する圧倒的な劇的テンションは、通常のステージツアーとは比較にならないエネルギーを要求する。「言葉の実験室」とも称されるこのステージは、時代ごとに形を変えながら進化を遂げてきた。劇場の空気と共振し、生身の歌を届けることへの渇望は、彼女の中で一度たりとも消え去ってはいない。