1990年代以降も、中川安奈の挑戦は止まらなかった。黒沢清監督によるサイコスリラーの金字塔『CURE』(1997年)では、精神の均衡を崩していく主人公の妻・高部文江役を怪演。感情の抜け落ちたような無機質さと、底知れぬ狂気の気配を見事に体現し、日本映画史に残るサスペンスの緊張感を支えた。
華麗な舞台演劇への出演を重ねつつ、テレビドラマや単館系映画でも唯一無二の存在感を発揮。美貌を誇示するのではなく、人間の弱さやエゴイズム、業の深さを表現できる希有なアクトレスとして、映画関係者から絶大な信頼を寄せられ続けた。