物語終盤、これまで誰に対しても恋心を抱いたことがなかったゴンに、劇的な変化が訪れます。凪が他の男性(慎二など)と関わる姿を見て胸の痛みを覚え、生まれて初めての「本気の初恋」を自覚する展開です。
ドラマ版の最終回において、ゴンはアパートの取り壊しを前に、持っていたすべての合鍵を処分した上で、凪にたったひとつの特別な合鍵を差し出し、「俺、凪ちゃんが好き。凪ちゃんのおばあちゃんになった姿が見たい」とストレートかつ誠実な告白を行いました。しかし、凪はこの熱烈な想いを涙ながらに断ります。
凪がゴンを振った理由は、ゴンが嫌いになったからではありません。むしろ、ゴンと一緒にいるとあまりの居心地の良さに甘えきってしまい、「自分の力で立ち上がり、未来を切り拓く」というお暇の目的を失ってしまうと気づいたからです。ゴンという極上のぬるま湯から抜け出すことこそが、凪にとっての真の精神的自立でした。
なお、ドラマ版と原作漫画の違いとして特筆すべきは、物語の着地点の描写深度です。ドラマ版は全10話という枠組みの中で、ゴンと慎二の双方と綺麗に区切りをつけ、凪が前を向いて歩き出す「爽やかな自立エンド」へとまとめ上げられました。一方、原作漫画ではゴンの内面描写や初恋の苦悩、凪との心理的な距離感がより長期にわたって生々しく描かれ、ゴンという人間の成長譚としても極めて重厚なストーリーテリングが展開されています。