多くの人が抱く疑問がある。「なぜ、隙を見て警察に駆け込まなかったのか」という問いだ。しかし、心理学や犯罪被害者支援の専門家は、これを「学習性無力感」の典型例だと指摘する。度重なる暴力と理不尽なルールによって、「何をしても無駄だ」「逃げればもっとひどい目に遭う」という思考停止状態に陥らせるのだ。
さらに、美代子は被害者たちに「共犯関係」を植え付けた。暴力の実行犯に仕立て上げることで、被害者を加害者の立場へと引きずり込む。これにより、「自分も罪を犯したのだから、もう警察には行けない」という絶望的な心理的障壁が完成する。物理的な鍵がかかっていない扉の前に立ちながら、一歩も外へ踏み出せない。これこそが、目に見えない監禁の正体だった。