日本語の慣用句 目がないには、文脈によって大きく分けて3つの意味が存在します。私たちが最も親しんでいるのは「特定の対象が非常に好きで理性を保てない状態」ですが、国語辞典(『広辞苑』『大辞林』など)を紐解くと、以下の通り多面的な意味が定義されています。
① 夢中になって判断力を失うほど好むこと
最も一般的な用法です。「甘いものに目がない」「最新ガジェットに目がない」というように、その対象を前にすると普段の冷静さを失い、自制が利かなくなるほどの執着や偏愛を表します。
② 物事の良し悪しを正しく見分ける能力(鑑識眼)がないこと
「彼には人を見る目がない」「骨董品を見る目がない」といった形で用いられます。この場合の「目」は視覚そのものではなく、価値を正しく評価・洞察する「鑑識眼(眼識)」を指しています。
③ 成功する見込みや勝ち目がないこと
「この勝負には目がない」「勝ち目がない」の原形にあたる用法です。状況が絶望的で、好転する可能性が見いだせない状態を表現します。
このように、「目がない」という一言には、感情の暴走、能力の不足、状況の不利という3つの異なるレイヤーが内包されている点が特徴的です。