芥川賞作家・吉田修一の小説を大森立嗣監督が映画化した『さよなら渓谷』は、単なる官能映画というカテゴリーに収まる作品ではない。凄惨な過去の事件で結ばれた加害者と被害者が、なぜか隣り合って暮らすという息詰まる愛憎劇。そこで真木よう子が体現した、傷つきながらも生きる女性の業と諦念は、観る者の心臓を叩き割るほどの強度を持っていた。
彼女はこの作品で見せた体当たりの脱ぎ身と絶望の微笑みにより、第37回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得。同年に『そして父になる』で助演女優賞もダブル受賞するという快挙を成し遂げた。感情の濁流をそのまま肉体に宿らせる彼女の演技は、観客の好奇心を一瞬で戦慄と深い感動へと変貌させたのだ。