出版業界において、田中角栄は今や一つの独立したジャンルとして定着している。金言集、名言録、秘書や記者の回顧録が次々と企画され、世代を超えて版を重ねている。
近年では紙の書籍にとどまらず、Amazon Kindleによる電子書籍の普及や、Audibleをはじめとするオーディオブック市場でも高い人気を誇る。特にオーディオブックでは、角栄のダミ声や独特の語り口を彷彿とさせるナレーションが好評を博し、移動時間や作業中にそのリーダーシップ論を学ぶリスナーが急増した。
言葉が記号化し、失言を恐れて定型句ばかりが繰り返される現代において、相手の胸板を素手で掴むような「生身の言葉」への渇望がある。角栄の肉声には、相手の損得ではなく感情を揺さぶる根源的な力が宿っている。