厳格な軍人というイメージが強い乃木ですが、若き昭和天皇に対しては単に厳しいだけでなく、時に祖父のような温かい眼差しを向けていました。昭和天皇と乃木希典の間には、数々の心温まるエピソードが残されています。
ある日、裕仁親王が乃木に連れられて山陰地方への修学旅行に出かけた際、乃木は親王が道端の昆虫や植物に興味を示す姿を見逃さず、熱心に解説を行いました。昭和天皇が生涯にわたって生物学者としての探究心を持ち続けた背景には、幼少期に乃木が自然への敬畏や観察の面白さを教えた経験が息づいています。
裕仁親王もまた乃木を深く敬愛し、院長を「乃木閣下」と呼んで全幅の信頼を寄せていました。乃木が寄宿舎で見せる温和な笑顔や、時に親身になって悩みを聞く姿に、親王は人間としての真の誠実さを感じ取っていたのです。