昭和史の転換点となった「荻窪会談」の密議が交わされた客間は、当時の写真や証言資料を基にミリ単位の精度で再現された。日独伊三国同盟の締結に向けた方針や、対米交渉の最終局面における議論など、密室で交わされた緊迫の肉声が今にも障子の隙間から漏れ聞こえてきそうな臨場感がある。
今回の全面公開で特に注目を集めているのが、非公開だった居住エリアの全貌だ。華族出身の宰相として大衆の熱狂を集めながらも、戦争回避と泥沼化する戦局の狭間で苦悩した近衛のプライベートな動線が鮮明に浮かび上がる。彼が最期を迎えた書斎兼寝室の窓からは、かつて彼自身が眺めたであろう庭園の起伏がそのまま広がり、訪れる者に言葉を失わせるほどの凄みを伝えている。