かつて武道館の客席を埋め尽くしていたのは、夫や兄、父親を戦場で失い、戦後の悲惨な混乱期を生き抜いた直接の当事者たちだった。黒の喪服に身を包み、涙を静かに拭う姿が追悼式の風物詩でもあった。
だが、2026年の風景は明らかに異なる。参列した遺族の最年長層は80代後半に差し掛かり、代わりに車いすを押す孫やひ孫、30代から40代の若年遺族の姿が目立つようになった。参列遺族の最高齢は90代半ば。戦後80年を超え、直接の「肉親の記憶」を持つ人々は限られつつある。
「父の顔も声も知りません。ただ、遺品の写真と母の言葉だけが私の頼りでした」と語るのは、長崎県から参列した78歳の男性だ。自分自身が高齢期に入るなか、子供や孫にどう戦争の愚かさを語り継ぐべきか、模索が続いているという。