本作のクライマックスにおいて、主人公・松原淑美(黒木瞳)が下した決断は、ホラー映画の枠を超えた「究極の母性」として今も語り草となっています。離婚調停中で精神的に追い詰められていた淑美は、娘の郁子(菅野莉央)と共に入居した古いマンションで、執拗な水漏れや不気味な怪異に悩まされていました。その怪異の元凶こそ、2年前に屋上の貯水槽に転落して命を落とした少女・河合美津子の怨霊でした。
エレベーター内になだれ込む大量の濁流の中、美津子の霊は淑美にしがみつき、母親の温もりを激しく求めます。淑美は愛する実の娘・郁子を救うため、自らが美津子の「母親」となって死の世界へ引きずり込まれる道を選びました。このエレベーターの扉が閉まる瞬間は、Jホラー史に残る屈指のトラウマシーンとして知られています。
さらに物語を決定づけるのが、10年後の後日談(ラストシーン)です。高校生へと成長した郁子(水川あさみ)が、取り壊しを控えたかつてのマンションを訪れます。そこで郁子は、当時の姿のまま現れた母・淑美の霊と再会を果たします。淑美は「郁子が元気に育ってくれただけで十分」と告げ、再び姿を消すのです。この結末について、ファンの間では「美津子の呪縛に囚われ続けながらも、母としての魂を保ち続けた淑美の無償の愛」という解釈が主流であり、単なる恐怖にとどまらない深い余韻を残しています。