工房に足を踏み入れると、甘く香ばしい蒸気の中に最新のセンサー機器が整然と並んでいることに気づく。温度や湿度、餡の糖度や粘度をリアルタイムでデータ化する一方で、最後の決定を下すのは常に職人の五感だ。
「データは職人のカンを否定するためではなく、技術の継承を加速させるためにある」。若手職人のひとりはそう直言する。かつて10年かかると言われた「餡の煮詰め具合の習得」が、視覚化されたデータと親切な指導によって短期間で高次元に達する。伝統の技術を秘伝のブラックボックスにせず、オープンかつ科学的に言語化することで、Z世代やα世代の若いクリエイターが続々と工房の扉を叩くようになった。