1973年、日本が高度経済成長の只中にあった時代に産声を上げたこの館は、日本の建築デザイン史においても特異な足跡を残している。設計を手掛けたのは、独創的な空間プロデュースで知られた建築家・渡辺富雄氏だ。当時の日本において、西洋の城郭を模した大規模なデザインを都市部に持ち込む試みは極めて大胆であり、竣工と同時に大きな衝撃を与えた。
外観に施された細密なレリーフ、優美な曲線を描くバルコニー、そして重厚な石造り風のエントランス。これらは単なる張りぼてではなく、本物の職人技が集結したアートワークであった。後に一世を風靡する昭和バブル建築の先駆けとなり、日本独自の欧風城郭建築というジャンルを確立した原点がここにある。東京都目黒区という屈指の高級住宅街に隣接するロケーションでありながら、一歩足を踏み入れれば異国へとトリップする構造は、当時の文化人やエグゼクティブたちを熱狂させた。