冷静に前後の文脈を読み解けば明白な通り、本来書かれるはずだった正しい文章は「ハンドルを右に」でした。レースゲームにおいてコーナー立ち上がりでステアリングを右に切る(カウンターステアを当てる)という、ごく自然な運転技術の指示です。
では、なぜ「ハンドル」が「インド人」という全く別の単語に化けてしまったのでしょうか。その原因は、当時の出版業界におけるアナログな制作環境とライターの手書き文字にありました。
1990年代後半は、デジタル入稿(DTP)への移行期であったものの、ゲーメスト編集部ではライターが専用の原稿用紙に手書きで攻略記事を執筆し、それを写植オペレーターが文字入力して版面を作成する手法が残っていました。締め切りに追われた攻略担当ライターが走り書きした「ハンドル」の筆跡が、以下のような視覚的錯覚を引き起こしたと分析されています。
カタカナの「ハ」の払いが離れて「イ」に見え、「ン」はそのまま「ン」、「ド」の濁点が小さく「ト」や「ド」の中間のように潰れ、極めつきに「ル」の2画目が詰まって漢字の「人」のように読めてしまった結果、オペレーターの手によって「ハンドル」→「インド人」へと奇跡の変換が行われてしまいました。