兼高の取材スタイルが今なお高く評価される最大の理由は、徹底した「他者への敬意」にある。観光地の名所旧跡をなぞるだけでなく、そこに生きる人々の喜怒哀楽、社会課題、伝統文化の深層へ分け入ることを決して恐れなかった。
彼女はケネディ大統領やモナコ公妃グレース・ケリー、インドのインディラ・ガンディー首相といった国家元首や要人たちへの単独インタビューを次々と成功させた。相手が一国の指導者であっても、人里離れた集落の住人であっても、彼女の真摯でフラットな視線は一切揺らぐことがなかった。
物事を一方的に断定せず、現地の文脈を尊重しながらありのままを伝える姿勢。それは、分断が進む現代の国際ジャーナリズムが最も見つめ直すべき原点を示している。