音楽家が映画を監督する例は国内外に存在するが、本作ほど音と映像が密密に絡み合った作品は稀だろう。セリフの間合い、波が崩れるタイミング、車のエンジンの回転音にいたるまで、すべての音響設計が音楽的リズムに基づいて精密に構成されている。
撮影監督をはじめとするプロフェッショナルなスタッフ陣との化学反応も、画面の随所に濃密な影を落としている。夕闇が迫る海岸のグラデーション、濡れたアスファルトの光沢、真夏の太陽の下で汗ばむ肌。これらは単なる背景ではなく、登場人物たちの言葉にできない感情を代弁する「音のない音楽」として機能しているのだ。