1990年代初頭に巻き起こった一連のムーブメントが日本社会を揺るがした最大の理由は、「アンダーグラウンドの表現であった無修正ヌードが、突如として超メジャーなメインカルチャーへ躍り出た」という文化的パラダイムシフトにあります。
それまで日本の出版界において、女性の陰毛が写り込んだ写真は刑法175条(わいせつ物頒布等の罪)に抵触するとされ、警察当局による厳しい取締対象でした。雑誌や写真集では「ボカシ」や「黒塗り」処理を施すことが絶対的な鉄則であり、メジャーな商業出版で堂々と描写されることはあり得ないタブーとされていたのです。
その強固な境界線を打ち破ったのが、写真家・篠山紀信が提唱した「ヘアヌード」という新概念と、トップ女優たちによる表現の覚悟でした。芸術性とエロティシズムの境界線を巡る法廷闘争や論争を飛び越え、大手出版社が堂々と全国の一般書店へ配本し、一般紙やテレビのワイドショーがこぞって特集を組んだことで、社会通念そのものが不可逆的な変化を遂げることとなりました。