多くの筆記者が「越」の筆順を誤る背景には、日本語の漢字教育における「部首の出現頻度」と「認知パターンの固定化」が深く関係しています。
小学校で最初に触れる代表的な「にょう(繞)」は、「道」「週」「進」などに使われる「しんにょう(辶)」です。しんにょうは原則として中身のつくりを先に書き、最後にしんにょうを書くというルールを徹底して叩き込まれます。その結果、「左下を覆う部首=最後に書くもの」という強力な運動記憶(マッスルメモリー)が脳内に形成されます。
しかし、漢字の筆順原則において、「しんにょう」「えんにょう(廴)」を除く大半の繞は「部首を先に書く」のが鉄則です。
このように、「しんにょう・えんにょう=後書き」「そうにょう=先書き」という明確な境界線を意識することが、筆順の混同を根本から断ち切る唯一の論理です。