総理大臣の座を降りる契機は、表向き発表される「体調不良」や「国政の停滞を防ぐため」という建前だけではありません。その引退理由の真相には、過酷な世論の反発、党内クーデター、あるいは総選挙の敗北といった生々しい権力闘争のドラマが刻まれています。
記憶に新しいところでは、長期政権を築いた安倍晋三氏の持病悪化による二度の退陣や、菅義偉氏が総裁選直前に下した不出馬の決断があります。特に菅氏の退陣劇は、新型コロナウイルス対策への批判と党内力学の急速な変化が重なった結果であり、権力の頂点がいかに脆いかを物語る事例となりました。さらに、岸田文雄氏が自民党派閥の裏金問題に対する「政治不信のケジメ」として総裁選不出馬を電撃表明した際も、自らの身を引くことで党の刷新感を演出しようとする高度な政治判断が働いていました。
野党に目を転じれば、2009年の政権交代後に誕生した鳩山由紀夫内閣は米軍普天間基地移設問題を巡る混乱、続く菅直人内閣は東日本大震災と福島第一原発事故の対応を巡る与野党からの不信任圧力、そして野田佳彦内閣は消費税増税に伴う「三党合意」と引き換えにした衆議院解散によって幕を閉じました。いずれのケースも、理想と現実のギャップ、そして政策決定の遅れが致命傷となった現実が浮き彫りになっています。