原宿で絶品ステーキを堪能したい肉好きの間で、秘密裏に語り継がれるシェフの特別メニューがある。温度と湿度を極限まで管理した専用セラーで45日間静置された、一握りの限定熟成肉だ。表面を乾かし旨味成分のアミノ酸を凝縮させた肉片が、熱した鉄板の上で鮮烈な音を立てる。
ナイフを入れた瞬間、すっと刃が通る柔らかさに誰もが言葉を失う。溢れ出る肉汁。それでいて重さは皆無だ。どこまでも澄んだ芳醇な香りが口いっぱいに広がる。話題の行列店では早朝から整理券が配られ、夜の予約は数か月先まで埋まる穴場店も存在する。本物を知る大人が夜な夜なこの地に吸い寄せられる理由は、一口食べれば全て理解できる。