結論から言えば、戸籍上の正式な読み方は「はら たかし」である。一方で、なぜ「はら けい」という読み方がこれほど定着しているのか。その答えは明治・大正期の言論界と政治文化にある。
当時は政治家や知識人の名前を音読みで呼ぶ風習が一般的だった。伊藤博文を「いとう はくぶん」、山県有朋を「やまがた ゆうほう」と呼んだように、「原 敬」も音読みで「はら けい」と親しまれた。特に新聞記者や政界関係者の間では、短く収まりの良い「はら けい」の呼称が好んで使われた経緯がある。
「敬」という漢字一文字の名は、南部藩の家臣であった原家に生まれ、幼少期に与えられた名徳に由来する。自身も日記や私的な書簡では「敬」の一字を重んじた。本人が「はら けい」と呼ばれることを否定しなかったことも、二つの読み方が今日まで残る大きな要因となっている。