御前崎の海岸線を走ると、古びた観光売店の並びに混じって、洗練されたデザインのカフェやゲストハウスが点在していることに気づく。市が主導するウォーターフロント再開発計画は、単なるハコモノ建設ではない。マリンスポーツ拠点としてのポテンシャルを最大限に引き出し、首都圏や中京圏からの関係人口を定住へと導く導線設計が施されている。
とりわけ注目を集めているのが、海岸エリアと連動した移住支援策だ。空き家バンクの拡充にとどまらず、テレワーク環境を備えたサテライトオフィスの整備や、創業支援補助金の拡充によって、20代から40代のクリエイターや起業家が移り住む動きが加速している。波を求めて移住したサーファーが焙煎コーヒー店を開き、地元農家と連携して特産品をリブランディングする事例も珍しくない。
こうした現場のうねりは、従来の箱庭的な地方誘致とは一線を画す。自然の厳しさと豊かさをそのままコンテンツ化し、ライフステージに合わせた柔軟な暮らし方を提示することで、観光地としての消費にとどまらない「選ばれる街」への転換が進んでいる。