近年ネットや動画配信プラットフォームで爆発的な人気を集めているのが、浴衣を着物風に着こなす方法です。「わざわざ高い夏着物を買わなくても、浴衣に衿をつけて足袋を履けば着物として扱える」という言説がインフルエンサーを中心に拡散されていますが、ここにはプロから見れば明白な「落とし穴」が存在します。
確かに、上質な木綿(綿麻や紅梅織、奥州小紋、有松鳴海絞りなど)で仕立てられた伝統的な色柄の浴衣であれば、下に「衿付きの夏用長襦袢(または美容衿)」を重ね、素足ではなく白足袋と草履を合わせることで、格式ある街着(普段着の小紋クラス)として昇華させることが可能です。昼間の美術館巡りやカフェ巡り、気軽な観劇程度であれば、十分に上品な夏着物スタイルとして通用します。
しかし、ネット上の誤解として警戒すべきなのは「どんな浴衣でも衿と足袋をつければ着物になるわけではない」という点です。例えば以下のような浴衣は、どれほど小物を工夫しても着物風に見せることはできません。
- 鮮やかすぎる大柄や原色系プリント:現代的なギャル系浴衣やイベント用の派手な花柄は、着物の小紋柄とは様式がかけ離れており、衿を重ねるとかえって不自然さが際立ちます。
- ペラペラの薄手化繊生地:透け防止の加工がされていない安価なポリエステル生地は、光沢感が安っぽく映り、格式のある着物には見えません。
- 短すぎる着丈:最初から「おはしょり」が作られて固定されている簡易浴衣(セパレート浴衣など)は、着物特有の美しい裾すぼまりのラインを作ることができません。
失敗しない着物・浴衣の選び方として押さえておきたいのは、「着物風に着回したいなら、藍染め、竺仙(ちくせん)などの伝統江戸小紋調、綿絽(めんろ)など、生地に織り感や伝統柄があるものを選ぶ」という鉄則です。素材の質感を無視して無理に着物化しようとすると、かえってアンバランスな印象を与えてしまいます。