「会社を休業していて給料が発生していないのに、なぜ年末調整の書類を出さなければならないのか」。人事労務の現場で毎年のように繰り返されるこの疑問に対し、税務の観点から導き出される結論は極めて明快です。原則として、会社から案内が届いた以上は必ず提出すべきです。
年末調整の対象期間は、その年の「1月1日から12月31日まで」の1年間です。仮に10月から育児休業に入った場合、1月から9月までに支払われた給料や夏季賞与からは、毎月の概算で所得税が源泉徴収されています。この天引きされた所得税は、1年間の正確な年収と各種控除を合算して初めて精算されます。年末調整の書類を提出しなければ、払いすぎた所得税が戻ってくる権利を自ら放棄することになります。
一方、丸1年間育休を取得しており、1年間の給与支給額が完全に「0円」だったケースではどうでしょうか。この場合、本人名義で納めた所得税が存在しないため、本人分の年末調整による還付金は生じません。それでも提出が求められる決定的な理由は、翌年度の住民税の基礎データとなる給与支払報告書が自治体へ正しく送付されないリスクを防ぐため、そして勤務先に「現在の就労・休業実態」を公的に証明するためです。提出を怠ると勤務先側で税務上の処理がストップし、無用なトラブルを引き起こす引き金になります。