この歴史的怪作のメガホンを取ったのは、数々の名作ポートレートで出版業界の頂点に君臨していた写真家の清水清太郎だった。清水は単なる性的な扇情を徹底して拒み、二人の危うい情熱を芸術の域にまで引き上げるべくシャッターを切り続けた。
現場となった海外ロケ地では、常に張り詰めた緊張感が漂っていたという。羽賀研二が見せる甘い笑みの裏に潜む野心と、彼に全てを委ねる梅宮アンナの一途な視線。清水清太郎のファインダーは、二人が演じていた「悲劇の恋人たち」という仮面の奥にある脆さを冷徹に見抜いていた。撮影が進むにつれ、スタッフの間にも「これは普通の企画ではない」という異様な空気が広がっていたと伝えられている。