出世作となった『ハチミツとクローバー』(ハチクロ)では、美大生たちの全員片思いという切ない群像劇を描き社会現象を巻き起こしました。作中のキャラクターたちが見せる不器用で真っ直ぐな恋模様は、連載当時から「作者の実体験に基づいているのではないか」と大きな反響を呼びました。
当時、一部のファンの間では「作中の登場人物に実在のモデルとなった恋人がいるのでは」「業界関係者との熱愛があるのではないか」といった憶測が飛び交いました。しかし、羽海野チカ自身はインタビュー等において、自身の美大予備校時代やデザイン会社勤務時代の空気感、友人たちとの会話の断片を抽出し、豊かなイマジネーションによって物語を構築していることを明かしています。
続く『3月のライオン』においても、プロ棋士の過酷な勝負の世界と川本家三姉妹の温かな食卓が見事に対比されていますが、こちらも徹底した取材と綿密な人間観察の賜物です。特定の熱愛報道や交際の事実がメディアで報じられたことは過去に一度もなく、私生活を過度に切り売りしない職人気質の姿勢が一貫しています。