フィギュアスケート界の絶対王者として君臨し、プロ転向後も新たな地平を切り拓き続ける羽生結弦。宇都宮直子が捉える羽生の輪郭もまた、世間一般に流布する偶像とは異なる陰影を帯びている。
リンクに立つ彼が見せる研ぎ澄まされた集中力、自らを極限まで追い詰めるストイックさ。宇都宮の眼差しは、天才が背負う孤独の深淵へと容赦なく降りていく。決して甘美な賞賛に逃げず、彼が放つ言葉の端々に宿る覚悟を、精密なピンセットで拾い上げるように描写する。技術論を超えた精神の相克を描くそのアプローチは、羽生という稀代の表現者の本質を鮮やかに際立たせる。