歴史の息吹が今なお色濃く残る箱根旧街道。江戸時代、幕府が定めた東海道五十三次の中でも、小田原宿から箱根宿に至る山道は最も過酷な難所として知られていました。当時は数多くの峠茶屋が街道沿いに暖簾を掲げていましたが、時代の波とともにそのほとんどが姿を消し、現在まで変わらぬ場所で営業を続けているのは甘酒茶屋ただ一軒のみです。
浮世絵師の歌川広重が描いた東海道五十三次の世界観がそのまま現代に息づくこの場所では、現在十三代目当主である山本重雄氏が代々の教えを受け継ぎ、古き良き日本の旅情を守り続けています。黒光りする太い柱や梁、土間の囲炉裏は、かつて参勤交代の武士や旅人たちが疲れた身体を休めた当時の空気感を今に伝えており、まさにタイムスリップしたかのような感覚を覚えます。