彼女の人生を大きく揺るがせた最大の試練、それが口腔がんの一種である舌がんだ。診断からの手術、そして組織再建という大手術は命を救った一方で、発声を行ったり食事を摂取したりする基本的な機能に重大な課題を残した。
直後に始まったのは、気が遠くなるようなリハビリテーションの連続である。思うように動かない舌を少しずつ鳴らし、正しい発声を取り戻す訓練と平行し、安全に食塊を喉へ送り込む摂食嚥下トレーニングが毎日繰り返された。噛む回数や口の動かし方一つひとつに意識を集中させる作業は、計り知れない忍耐を要する挑戦だった。