駅の伝言板が日本全国の鉄道網に定着したのは、1950年代から1960年代の高度経済成長期にかけてのことです。当時の国鉄(現・JR)や大手私鉄各社が、駅利用者の利便性向上を目的に主要駅の改札口付近に設置したのが始まりとされています。
公衆電話には長蛇の列ができ、個人が移動中に連絡を取り合う手段が一切存在しなかった時代、駅は最大の交通結節点であり、待ち合わせの要所でした。電車の遅延やすれ違いが発生した際、黒板にチョークで用件を残す仕組みは、当時の社会インフラとして極めて機能的だったのです。
1970年代から1980年代にかけて設置数はピークを迎え、東京の新宿駅や渋谷駅などの巨大ターミナルから地方のローカル駅に至るまで、ほぼすべての駅で当たり前に見られる風景となりました。黒板の周囲には常にチョークと黒板消しがぶら下げられ、無数の筆跡が重なり合う光景は、昭和レトロの情緒を物語る象徴的な文化となりました。