日本映画の最高峰として世界中から注目を集める是枝裕和監督の現場でも、植物を用いた視覚的修辞は極めて高い精度で練り上げられている。とりわけ、圧倒的な演技力で世界を魅了する俳優の安藤サクラとの再タッグ作品においては、静寂の中に漂う情念を花を通じて表現する手法が大きな話題を呼んだ。
従来の甘美なロマンス映画の枠組みを打ち破り、人間の孤独や割り切れない情愛の交差を描く際、画面に配された花は登場人物たちの言葉にできない感情の受け皿となる。沈黙の演技と美術が完璧に調和した瞬間、観客はスクリーン越しに生き生きとした感情の波を受け止めることになるのだ。