ネット上の掲示板や知恵袋などで散見される「なぜ同じ俳優なのに作品や媒体によって声優が変わってしまうのか」という疑問には、一般にはあまり知られていない業界構造上の理由があります。
第1に、制作主体と権利の管轄が異なる点です。地上波のテレビ局が制作費を出資して制作した音源の権利は放送局にあり、映画配給会社が二次利用(パッケージ化や配信)を行う際には権利クリアランスや追加の許諾料が発生します。そのため、権利調整が難航した場合や原盤テープの管理状態によっては、配給会社主導で新たに音源を制作(ソフト版新録)するほうが合理的と判断されるケースが多々ありました。
第2に、音響監督の演出方針とキャラクター解釈の変遷です。1970〜80年代のヒーロー像は「誰からも愛される完全無欠の正義」が求められましたが、2010年代以降は「現実社会の摩擦に悩むリアルな人間性」が重視されるようになりました。作品のトーンや世界観が再構築(リブート)されるたびに、その時代の空気感に最も適した声優がオーディションやキャスティング会議を経て選定されているのが現実です。