本作のメガホンを取ったのは、世界的名匠である是枝裕和。そして、圧倒的な存在感で主人公の狂気と哀愁を体現したのが名優・役所広司だ。この二大巨頭のタッグが発表された当初、業界内には驚きが広がった。ヒューマンドラマの旗手として知られる是枝監督が、なぜここまで純度の高いサイコスリラーに挑んだのか。
役所広司が演じる男の歪んだ内面は、観る者の倫理観を容赦なく試す。現場関係者は「撮影中の役所さんの鬼気迫る眼光に、スタッフ全員が息を呑んだ」と証言する。人間の善意がほんの一歩で悪夢へと反転する瞬間を、是枝裕和は見事な手腕でフィルムに焼き付けた。